在宅薬剤師の仕事、業務内容とは?〜つらいこと、やりがいを公開〜

在宅薬剤師の仕事、業務内容とは?〜つらいこと、やりがいを公開〜

在宅薬剤師の業務、仕事はどのようなものなのか? 日本国内で在宅薬剤師はまだまだ認知されていないこともあり、まだ具体的な業務について詳細を把握されている方は多くないと思います。しかし今後の日本の医療問題を考えると、在宅薬剤師の数はどんどん増えていくことでしょう。実際に今の在宅薬剤師がどのような仕事をしてるのか、見ていきましょう!

在宅薬剤師の仕事内容は?


○患者宅を訪問し、医薬品を届ける
医師より処方された薬を調剤し、薬剤師が患者宅まで薬を届けることで、患者とその家族が薬を取りに行く負担を軽減できます。在宅医療を受けている高齢者やその家族にとって、処方された薬を頻繁に受け取りに行くことは、時間的にも経済的にも大きな負担です。

介護ヘルパーに頼んだ場合、介護報酬の区分限度額内での点数制限の中から請求することになります。しかし、薬剤師が薬を届ける場合、区分限度額外の点数を使いますので、その他の介護サービスを削る必要もなくなるというメリットもあります。

また、日常生活の場に薬剤師が訪れることで、実際の服薬状況や困っていること、薬の保管状態などをきめ細かく確認できるようになります。

在宅を専門とする薬剤師の一日の流れとしては、9時頃まで提携している医療クリニックなどとの情報共有や訪問する患者さんの資料の整理などを行います。その後、午前の分の施設や患者さん宅を訪問します。薬局に戻り昼食をとり、午後の分の訪問を行ったのち、最後に薬歴や報告書などの作成を行い、18時頃業務終了です。

○医薬品の管理や服薬指導を行う
高齢者では、認知機能の低下により、間違った服用量を飲んでいたり、習慣的に飲み忘れていたり、何の薬かよくわからないまま服薬を続けている場合もあります。さらに、嚥下障害などの身体的機能の衰えにより、錠剤などの服薬が困難な高齢者もいます。在宅薬剤師は患者の服薬状況や生活パターン、行動を聞き取り、それに合わせて自宅でできる簡易懸濁法などを指導したり、場合によっては剤型変更などを行います。

また、自宅保管の薬の過不足の確認などを行い、必要があれば薬の飲み忘れを予防するためのカレンダーやピルケースを提供する、複数の薬を一包化する、など個人に合わせてサポートしていきます。

チーム医療の当事者。在宅医療の一員としての役割を担う


訪問は基本的に薬剤師一人ですが、在宅訪問医療というチームの中の一員です。得られた患者情報は医師や看護師、ケアマネージャーなどにフィードバックして共有し、また逆に他のスタッフから得られた情報を基に、薬の治療効果や副作用の影響をよりきめ細かくチェックするなどして、ともに在宅医療の質の向上をめざします。

薬局のかかりつけ薬剤師は、どの病院からの処方箋も扱うことによって、患者の薬物療法の安全性・有効性を向上させることが求められますが、さらに在宅薬剤師は、かかりつけ薬剤師以上にきめ細かく患者個人の薬物療法や日常生活のサポートをする役割を担うことが求められます。

在宅薬剤師になるためにはどうすればいいの?


在宅薬剤師になるために、薬剤師の資格以外に特別な資格が必要なわけではありません。しかし、患者宅を訪れて患者の生活スタイルや環境などを考慮した薬の管理や服薬指導、緩和ケアなど総合的な判断とアドバイスを行うため、薬剤師としての経験・知識、さらにコミュニケーション能力も求められます。

待ち時間を意識する調剤薬局では、業務をこなすスピードが求められることも多いかもしれません。しかし在宅薬剤師にとってはスピードより、患者の状況に合わせて的確に薬剤管理や服薬指導ができることのほうが重要となります。

また個人の生活に一歩踏み込んでいくことになるため、医療の知識だけでなく、患者から困っていることや健康チェックなどをしっかり聞き出し、それに対応するミュニケーション能力、さらに相手の気持ちや立場に配慮した言動や立ち居振る舞いなども求められます。

在宅医療はチーム医療です。医師をはじめ、訪問看護師や歯科医師、ケアマネージャー、ホームヘルパーなどと連携して患者をサポートする必要があります。患者の情報を共有する場合、連絡ノートや電子カルテ、電話など、直接顔を合わせずにコミュニケーションをとることが多くなります。

情報共有がうまくできるかどうかは患者のサポート体制に大きく影響するため、チームの意思疎通をはかり、異業種の人にもわかりやすく適切な説明がすることが大切となってきます。薬剤師自身も、薬剤の知識だけでなく、検査値や画像診断、介護などの知識も必要となってきます。

認定薬剤師の一つに、在宅療養支援認定薬剤師があります。在宅療養支援認定薬剤師とは、在宅医療の支援に必要な知識や技能を備えた薬剤師のことで、在宅療養支援認定薬剤師制度の試験などに合格すればなることができます。

在宅訪問を行う上で必須の資格ではありませんが、得られた知識や技能は、自らのスキルアップに加え、より高度な在宅療養の支援につながり、患者や他のスタッフの信頼を得るのに役に立つでしょう。

在宅薬剤師でつらいこと


つらいことですぐに思いあたるものが、時間に追われるということです。

在宅薬剤師は、社会のニーズも高く、今後の高齢化社会における医療において重要性も高いですが、活躍する環境はまだ整っていない現状があります。日本薬剤師会のデータによると、平成28年の時点で訪問薬剤管理指導届出を出している薬局の全薬局のおよそ一割程度にとどまっています。また在宅訪問医療に特化した薬局はまだ少なく、大半は調剤業務と訪問業務を兼務しています。

届出数と実施数に乖離がある大きな要因の一つが人員の負担です。在宅薬剤師は基本的に調剤業務と兼務しながら訪問業務を行いますが、小規模な薬局においてそれは大きな負担になります。

勤務する薬剤師が一人ないしは二人と少なければ、開局時間内に患者宅を訪問することが難しく、閉局後もしくは一時的に閉局するなどして対応せざるを得ず、調剤業務に支障をきたしたり、長時間勤務につながります。

また、移動にかかる時間や報告書の作成など、増加する業務負荷に対応することも容易ではありません。また給与の面で、在宅薬剤師となっても変化はほとんどありません。

しかし、現在、在宅医療の現場では、看護・介護職員などがやむを得ず薬にかかわっているのが現状です。適正な服薬指導を行うことで治療効果を高め、より充実した在宅医療を実現するためにも薬剤師の参加が求められています。

在宅薬剤師のやりがいは?

在宅薬剤師は、これまで薬局の外にほとんど出ることがなかった薬剤師たちが、自らのフィールドを広げ、薬の受け渡しだけなく、その先の薬の効果、副作用のチェックなどを患者個人の生活に合わせてよりきめ細かく対応するという、薬剤師としての職能を十分に発揮できる業務です。

チーム医療の一員としての責任を担い、医師や看護師、介護福祉士などと連絡を取り合い、患者の容態や服薬状況、検査値などの臨床的判断のもと、医師に根拠のある投薬提案もできるようになります。

慢性的な人員不足や多忙を極める調剤業務との兼務など、薬剤師としての負担は増すかもしれませんが、薬剤師としてのこれからのキャリアを考えたときに、早めに在宅医療を経験しておくことは、大きなステップアップにつながるでしょう。

まとめ


今後、医療データの活用や、AI技術など科学の進歩により、ハード面やソフト面でのサポートが充実すればするほど、在宅薬剤師が職能を発揮できる環境が整っていく可能性があります。

在宅薬剤師は、高齢化や医療の個別化が進み、社会のニーズがさらに高まっていけば、これからますます活躍の場が増える可能性のある職種です。

この記事の監修
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西 智行
株式会社スマイリンク

薬科大学卒業後、大手製薬会社の医薬情報担当者(MR)として入社。3年間福島県の郡山を中心に営業活動を行い、薬局経営事業に着手。関東中心に4店舗のM&Aを経て、薬局経営コンサルや転職コンサルに従事している。

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