居宅療養管理指導とは?制度の概要・流れ・算定要件

居宅療養管理指導とは?制度の概要・流れ・算定要件

居宅療養管理指導はどういった業務なのでしょうか。実施のための準備や算定要件などは、患者宅を訪問する前に確認しておきたいですよね。しかし保険関連の文書は専門用語も多く、複雑で理解しづらい部分もあるかもしれません。

そこでこの記事では、実際に居宅療養管理指導を行ったことのある薬剤師が、業務内容や訪問の流れ、算定要件について解説しています。実際に業務をおこなう際に知っておきたいことをまとめていますので、ぜひご一読ください。

居宅療養管理指導とは?介護保険を利用する患者への在宅医療の提供


居宅療養管理指導の概要と、居宅療養管理指導における薬剤師の役割を説明します。

居宅療養管理指導の概要

居宅療養管理指導とは、通院が困難な患者に対して介護保険を利用して在宅医療を提供する業務を指します。薬剤師のみがおこなうものではなく、以下のような地域の医療従事者がそれぞれ患者の居宅を訪問し、医療を提供するサービスです。

・医師
・歯科医師
・薬剤師
・歯科衛生士
・管理栄養士
・保健師
・看護師
・准看護師

居宅療養管理指導をおこなうためには、本来は「介護保険法による医療系サービスの事業者」の届出が必要でした。しかし保険薬局であれば「みなし規程」があるため、何もしなくても届出たものとみなされ、手続きは不要です。

居宅療養管理指導における薬剤師の役割

居宅療養管理指導において薬剤師が行う業務には以下のようなものがあります。

・薬歴管理
・服用指導
・薬剤服用状況及び薬剤保管状況の確認 等

実際には医薬品や医療衛生材料の供給、薬物治療の評価、副作用モニタリング、処方提案など業務内容は多岐にわたります。薬の専門家である薬剤師が関わることで、薬物療法の質を高めることが期待されています。また、他の職種が自分の専門分野に専念できるのもメリットです。

居宅療養管理指導の対象患者は?訪問薬剤管理指導(医療保険)との違い


居宅療養管理指導を利用できるのは介護保険で認定を受けている方のみです。患者が介護保険で要介護もしくは要支援の認定を受けていれば、以下の費用を介護保険で請求しましょう。

要介護1〜5 居宅療養管理指導費
要支援1〜2 介護予防居宅療養管理指導費

介護保険で認定を受けていない患者の場合は、在宅患者訪問薬剤管理指導といって医療保険を使って在宅医療を提供する方法があります。実際に薬剤師が患者宅で行う業務は、居宅療養管理指導も在宅患者訪問薬剤管理指導も同じです。

介護保険で認定を受けている患者については、介護保険が優先です。よって医療保険で訪問薬剤管理指導費を請求することはできません。

介護保険を使う人のことを正式には「利用者」と呼びますが、この記事では「患者」に統一しています。

居宅療養管理指導を実施する流れ:フローチャート

居宅療養管理指導を行う流れをフローチャートにまとめました。流れに沿ってくわしく説明していきます。

【準備】掲示物・必要書類

掲示物や必要書類を準備しましょう。日本薬剤師会の会員であれば、日本薬剤師会のホームページにある「在宅服薬支援マニュアル」よりサンプルをダウンロードできます。
http://nichiyaku.info/member/kaigo/fukuyakushien.html
居宅療養管理指導に必要な掲示は以下の2種類です。

1.介護保険サービス提供事業者としての掲示
・居宅療養管理指導を行なっている旨
・営業時間
・利用料金
・介護保険事業所番号
・事業所名、所在地、管理者名、連絡先電話番号

2.運営規程
・事業の目的及び運営の方針
・従業者の職種、員数及び職務の内容
・営業日及び営業時間
・指定居宅療養管理指導の種類及び利用料その他の費用の額
・その他運営に関する重要事項

また患者に以下2つの書面を用いてサービス内容を説明し、同意を得なければいけません。

1.重要事項説明書
・運営規程の概要
・居宅療養管理指導従業者の勤務の体制
・その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項

2.契約書
居宅療養管理指導は介護保険サービスとして提供するものなので、患者と契約書を交わす必要があります。在宅患者訪問薬剤管理指導では契約書は不要ですが、居宅療養管理指導の場合は必須となるため、忘れないようにしましょう。サービス内容と費用について事前に説明し同意を得ます。

介護保険法による医療系サービスの事業者の届出は、保険薬局であれば不要です。しかし請求に関しては「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」を国保連合会介護保険係に提出する必要があります。

【訪問開始のきっかけ】医療従事者からの提案・患者からの要請

訪問を開始するきっかけとしては、医師や薬剤師をはじめとする医療従事者側からの提案と、患者や家族からの要請が考えられます。

どちらにしても居宅療養管理指導を使って患者宅を訪問するには、医師の指示が必要です。指示は口頭でも構いませんが、処方箋の備考欄に記載してもらうのがよいでしょう。

初回訪問時に患者または家族と契約書を交わし、訪問の了承を得ます。医師やケアマネージャーから情報を提供してもらい、在宅訪問を開始しましょう。サービス担当者会議に出席したり、退院時カンファレンスに参加したりすることもあります。

【処方箋受け付け】訪問前に薬学的管理指導計画書を作成する

処方箋を受け付け、調剤します。処方箋の内容をFAXや電子メールで送ってもらい、処方箋原本は訪問時に受領するとよいでしょう。訪問前に薬学的管理指導計画書を作成する必要があります。

指導内容、訪問回数、訪問間隔などを記載してください。訪問の際は薬だけでなく、身分証明証や明細書などを忘れずに持っていきましょう。介護保険の明細書は、医療保険とは分けて用意します。

【訪問】介護認定を確認・薬学的管理指導を行う

患者の居宅を訪問し、薬学的管理指導をおこないます。介護保険被保険者証の確認ができていない場合は、訪問時に見せてもらいましょう。

【訪問後】薬剤服用歴の記載・報告書の作成

訪問したら薬剤服用歴を記録します。また報告書を作成し、医師に提出しましょう。ケアマネージャーをはじめとする他職種とも情報を共有します。

居宅療養管理指導費の算定要件と介護報酬の単位数(点数)


居宅療養管理指導費の算定要件や介護報酬の単位数など保険上のきまりをまとめておきます。

算定要件6つのポイント

居宅療養管理指導のおもな算定要件は以下の6つです。

居宅療養管理指導のおもな算定要件

1.医師または歯科医師の指示があること
2.薬学的管理指導計画を策定していること
3.薬学的管理指導を行なっていること
4.薬剤服用歴を記録していること
5.医師または歯科医師に書面で情報提供していること
6.ケアマネージャーに情報提供していること

正式な規則については以下に記載があります。算定前に一度確認しておくとよいでしょう。

「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」

出典:【指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準:厚生労働省】https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000080856.pdf

介護報酬の単位数(患者の自己負担額)と算定できないケース2パターン

居宅療養管理指導費の介護報酬単位数と患者の自己負担額は以下の通りです。

介護報酬単位数 自己負担額(1割負担の場合)
単一建物居住者が1人 507単位 507円
単一建物居住者が2~9人 376単位 376円
単一建物居住者が2~9人 344単位 344円

居宅療養管理指導の算定は、一人の患者に対して「週に1回かつ月に4回まで」と定められています。末期の悪性腫瘍の患者等の場合は「週2回かつ月8回まで」算定できます。これ以上訪問しても、費用は請求できません。交通費は別途患者に請求してもよいことになっています。

また以下の場合は、居宅療養管理指導を算定できないため注意が必要です。

・他の薬局が居宅療養管理指導費を算定している場合
・患者が介護老人福祉施設(特養)や介護老人保健施設(老健)などの施設に住んでいる場合

2018年度介護報酬改定での変更点


2018年度(平成30年度)の介護報酬改定で、薬剤師がおこなう居宅療養管理指導に関して2点変更点がありました。

1.訪問人数等に応じた評価の見直し
2.特別地域加算等の新設

それぞれくわしく見てみましょう。

訪問人数等に応じた評価の見直し

これまでも同じ建物に患者が一人だけの場合と、施設のように患者が複数人住んでいる場合で介護報酬の点数が異なりましたが、今回の改定で分け方が変更になりました。

<改定前>
同一建物居住者以外 503単位
同一建物居住者 352単位
<改定後>
単一建物居住者が1人 507単位
単一建物居住者が2~9人 376単位
単一建物居住者が10人以上 344単位

例外規定なども変更があるので、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」で該当部分を確認しておきましょう。

特別地域加算等の新設

新たに特別地域加算など、地域の状況に応じて加算がつけられるようになりました。

特別地域加算 所定単位数の100分の15
中山間地域等における小規模事業所加算 所定単位数の100分の10
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 所定単位数の100分の5

以上の3パターンで、通常の居宅療養管理指導費に追加で算定できます。

【資料】居宅療養管理指導サービスコード表

薬剤師がおこなう居宅療養管理指導のサービスコード表は以下で確認できます。

  • 介護給付費単位数等サービスコード表(平成30年4月施行版)
  • 介護サービス 68ページ
    https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2018/0403134449464/20180403_004.pdf

  • 介護給付費単位数等サービスコード表(平成30年4月施行版)
  • 介護予防サービス 9ページ
    https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2018/0403134456255/20180403_005.pdf

    出典:【WAM NET 介護給付費単位数等サービスコード表(独立行政法人福祉医療機構:https://www.wam.go.jp/hp/)】

    まとめ

    居宅療養管理指導とは、介護保険で認定を受けた患者に対し、在宅医療を提供するサービスでした。居宅療養管理指導を行うためには医師の指示が必要です。初回訪問時には、患者と契約書を交わし、同意を得てサービスを始めるようにしましょう。訪問後には医師やケアマネージャーへの報告をおこないます。薬学的管理指導計画書をみなおすことで、より質の高いサービスの提供を目指しましょう。

    この記事の監修
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    西 智行
    株式会社スマイリンク

    薬科大学卒業後、大手製薬会社の医薬情報担当者(MR)として入社。3年間福島県の郡山を中心に営業活動を行い、薬局経営事業に着手。関東中心に4店舗のM&Aを経て、薬局経営コンサルや転職コンサルに従事している。

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