在宅薬剤師の褥瘡との向き合い方

在宅薬剤師の褥瘡との向き合い方

在宅薬剤師の仕事をしていると、多くのケースで「褥瘡(じょくそう)」を目にする機会があります。褥瘡は症状が酷くなると手が付けられなくなることも多いため、早期発見や早期治療が求められます。そこで、褥瘡とは何か、その症状や選択すべき薬剤などを中心に解説します。

褥瘡とは

これまでみなさんが目にしたことがあるように、褥瘡にはさまざまな状態があるため、一言で状態や形態を説明できません。そのため、的確な薬剤を使用して褥瘡にアプローチしていかなければ、どんどん状態は悪化していきます。

日本褥瘡協会の定める定義では、褥瘡とは「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。」としています。

つまり、体重で圧力のかかっている身体の部位の血流が悪くなり、必要な栄養が身体の隅々にまで行き渡らなくなるため、いわゆる「床ずれ」がひどくなった状態のことです。通常であれば、寝たままの体制でも寝返りをうつ、座ったままでもお尻を浮かせるなどの行為(体位変換)が行えますが、それができない状態にある患者様に見受けられる病状が褥瘡です。

特に高齢者やステロイドなどの副作用の影響で免疫力が落ちている方に多く、長時間寝たきり、栄養が取れていない方にも見受けられます。褥瘡を正しく理解することにより、その症状を和らげることが私たちの課題です。

褥瘡の症状、病態


褥瘡の初期状態では、主に「腸骨」「尾骨」そして「仙骨部」などに赤い斑点が見られます。その他で褥瘡が出やすい部位として「後頭部」「肩甲部」「耳」「肩」「ひじ」「ひざ」「かかと」「くるぶし」「背部」「坐骨」などが挙げられます。

具体的な褥瘡の確認方法として、褥瘡が疑われる部位を指で押したときに、赤みが消えずそのままであれば褥瘡です。このときに赤みのある部位が白く変化し赤く戻った場合には、褥瘡でない可能性が高いため心配ないでしょう。

これを「指押し法」と呼びますが、褥瘡が疑われる場合には、すぐに医師または看護師に相談しましょう。褥瘡が酷い状態の場合、発赤を伴い滲出液や浮腫状の肉芽組織が見えていることもあり、早急な処置を必要とします。

褥瘡は単純な阻血ではなく、4つの障害が複雑に絡み合って形成されています。その4つとは、「阻血性障害」「再灌流障害」「リンパ系機能障害」「細胞・組織の機械的変形」です。

基本的には外部圧力により血流が阻害され、組織や細胞に負荷または損傷することが要因です。

褥瘡の薬剤選択


褥瘡の治療方法は「保存的治療」「物理療法」「外科的治療」の3つに分けられます。基本的には一般社団法人「日本褥瘡学会」のガイドラインに従い、用意されたアルゴリズムを使用して適切な処置を施すことが大切です。褥瘡の薬剤はさまざまな種類があるため、褥瘡の症状により使い分ける必要があります。

急性期褥瘡

適度に湿潤環境をキープしながら、創面の保護観察を行うことが重要な状態。高い創面保護効果が期待できる「白色ワセリン(亜鉛華軟膏)」、「ジメチルイソプロピルアズレン(アズノール軟膏)」を選択。万一、感染を伴っている場合には、「スルファジアジン銀(ゲーベンクリーム)」を選択。

深部損傷褥瘡(DTI)

適切に除圧を行う必要がおり、慎重な保護観察を行うことが重要な段階。高い創面保護効果が期待できる「白色ワセリン(亜鉛華軟膏)」、「ジメチルイソプロピルアズレン(アズノール軟膏)」を選択。

浅い褥瘡

創面保護が必要な水疱、発赤や紫斑が見られる初期の浅い褥瘡。高い創面保護効果が期待できる「白色ワセリン(亜鉛華軟膏)」、「ジメチルイソプロピルアズレン(アズノール軟膏)」を選択。

びらん、浅い潰瘍

創面保護や湿潤をキープすることが重視される状態。高い創面保護効果が期待できる「白色ワセリン(亜鉛華軟膏)」、「ジメチルイソプロピルアズレン(アズノール軟膏)」を選択。

上皮化を促す場合には、アルプロスタジルアルファデクス(プロスタンディン軟膏)、ブクラデシンナトリウム(アクトシン軟膏)、リゾチーム塩酸塩(リフラップ軟膏)を選択。

薬剤師が気になる基剤について


外用薬は主薬と基剤から形成されており、薬剤を保持する役割を持っているのが基剤です。薬として効果があるのは主薬であり、それを溶解・浸透させるのが基剤の役割です。メインとして使用されるのが、「油脂性基剤」と「乳剤性基剤」です。

「油脂性基剤」:ワセリンベースで皮膚に対してもっとも刺激が少ない。

「乳剤性基剤」:吸収性が高く乾燥した部位に使用する。

その他では、「ゲル剤」「テープ剤」「液剤」「スプレー」なども使用されます。褥瘡の症状にあわせて効用を持つ主薬を選択し、皮膚の状態が乾燥しているのか、または湿潤状態にあるのかで基剤を選択していきます。今さら聞けないという方のために、基剤の使い分けや注意点を解説します。

創傷被覆材とは

創傷被覆材やドレッシング剤は創傷や熱傷、そして褥瘡を覆うための素材です。日本褥瘡学会の定義では、「創における湿潤環境形成を目的とした近代的な創傷被覆材をいい、従来のガーゼは除く」とされています。

ドレッシング材という言葉もありますが、具体的には「ドレッシング材(近代的な創傷被覆材)」+「ガーゼなどの材料(古典的な創傷被覆材)」=創傷被覆材というのが褥瘡学会での定義となります。

創傷被覆材には、傷に貼れて保険にも通る「ハイドロコロイド」「ハイドロゲル」「親水性メンブラン」「親水性ファイバー」「ポリウレタンフォーム」などがあります。また、傷に貼れるが保険が通らないものとして「非固着成分コートガーゼ」「モイスキンパッド」「メロリン」、傷に貼れず保険が通らないものとして、「ロールフィルム」や「すべり機能付きドレッシング」などがあります。

基剤の使い分け・注意点

基剤の選択を間違えることで、刺激が強すぎて局所性副作用を引き起こす危険性もあるため注意してください。

【基剤使い分け表】

紅斑 水疱 びらん 潰瘍
油脂性基剤
水溶性基剤
乳剤性基剤 × × ×
ゲル基剤
ローション基剤
テープ剤

◎:良く適している ◯:適している ×:適していない

あくまで一般的な指標なため、必ずしも表通りではないケースもあります。注意点としては、乳剤性基剤やローション基剤については、皮膚への浸透性が非常に高いため、「びらん」や「潰瘍」状態にある場合は危険です。「びらん」や「潰瘍」状態にある場合、皮膚が欠損状態にあります。

欠損状態の皮膚は刺激に敏感なため、添加物の多く浸透性の高い乳剤性基剤やローション基剤は適していません。水疱、びらん、潰瘍など、皮膚の状態に合わせた的確な処置を身に付けましょう。

まとめ


今回は褥瘡とは何か、どのような基剤を使い何に気を付けるのかを中心に解説しました。褥瘡は患者様ひとりひとりで症状も形態も異なります。どのようなケースにも対応できるように、日頃から褥瘡に対する知見を高めておくことを心掛けましょう。

この記事の監修
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西 智行
株式会社スマイリンク

薬科大学卒業後、大手製薬会社の医薬情報担当者(MR)として入社。3年間福島県の郡山を中心に営業活動を行い、薬局経営事業に着手。関東中心に4店舗のM&Aを経て、薬局経営コンサルや転職コンサルに従事している。

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