在宅薬剤師のOD錠との付き合い方

在宅薬剤師のOD錠との付き合い方

在宅薬剤師に限らず、薬剤師として仕事をしていると必ず関わってくることになるのがOD錠です。OD錠には、普通の錠剤に比べて様々な特徴があります。それらの特徴は在宅薬剤師が業務を行う上で、知っておくと役立つことになります。

これから高齢社会を迎える日本の医療において、在宅薬剤師の需要が伸びてくる事が予想されます。そのため、介護を必要とする高齢者一人一人にあった薬剤を選ぶ事は重要なスキルになるでしょう。

今回は在宅薬剤師が知っておく必要のあるOD錠について解説していきます。

OD錠とは


OD錠は口腔内崩壊錠とも呼ばれていて、「Oral disintegration」の略になります。薬剤に細かい穴を開けたり、少しの水分で崩れやすくなる成分で薬剤を固めたりして溶け易くしているので、口の中でラムネ菓子のように溶けるのが特徴の剤形になります。薬剤名にOD錠やD錠とついていると口腔内崩壊錠に該当します。

OD錠は唾液や少量の水でもすぐに溶けるので、水なしで飲み込める事ができます。車酔いの時などで水がすぐに用意できない場所や、夜眠れない時に睡眠導入剤を飲みたい時、小さい子供、高齢者、飲み込む力(嚥下能力)が弱くなっている方にも使う事ができます。

在宅で見るOD錠のデメリット
・メリット

メリット

1.口の中で溶ける
在宅医療においてOD錠の最大のメリットは口の中で溶ける事です。介護が必要な高齢者になると嚥下能力が下がっている事が多く、大きい錠剤になると飲み込めなくなる方も多いです。OD錠は口の中で溶ける性質上、嚥下能力が低下している高齢者も飲み込みやすくなっています。

味についてもココア味やイチゴ味など飲みやすいように工夫されていることもあります。

2.介護者の負担が減る
お薬が飲み込めない事で薬を飲む事を嫌がる方もいます。お薬を飲みやすくする事で介護者の負担を減らす効果も得られます。高齢者の中には胃ろうを導入している方もいらっしゃいます。胃ろうの場合は薬をお湯に溶かしてからチューブで入れますが、他の薬剤に比べて溶けるのが早いため介護者の負担も減ります。

3.調剤の手間と時間が減る
調剤する薬剤師にもメリットはあります。嚥下能力の低下している患者に対しては錠剤を粉砕などして粉状にして調剤しますが、OD錠で調剤した場合にはそれらの手間が減るので準備の時間も短くなります。また、薬剤によっては湿気や光に耐えられるようにコーティングをしているものもあるのですが、粉砕をするとそれらのコーティングが無くなってしまいます。

そのため粉砕に向かない薬剤も存在しますが、OD錠があればそのままお渡しできます。

デメリット

1.長期保存に向かない
OD錠は水に溶けやすい性質を持っています。しかし、普通の錠剤に比べて湿気にも弱くります。包装の中にある場合は問題はありませんが、一包化などで包装から取り出した場合には湿気などで脆くなる場合があります。

2.溶ける感じが不快に思う方もいる
OD錠が口に溶ける感じを不快に感じる方も少数ながら存在します。また、味についてもミント味、ココア味、いちご味など様々なものが存在していますが、それらの味に不快感を感じる方もいますので味についても注意が必要です。

3.全てのお薬にOD錠が存在しているわけではない
メリットが多いOD錠ですが、全てのお薬にOD錠があるわけではありません。OD錠が日本に導入されるようになったのは1997年ごろで、歴史としては20年ほどしかありません。今後普及率は上がっていきますが、それでも全ての患者に対応できるものではないと言えます。

また、複数の薬剤が処方されている場合に、OD錠が存在しない薬剤があるとOD錠のメリットがなくなってしまうことも考えられます。

OD錠の種類とそれぞれの効能


OD錠とはついていない口腔内崩壊錠も存在しているのでOD錠ではないからといって口の中では溶けないということではありません。

OD(Orally disintegrating)口腔内崩壊
代表的な薬剤としてはタケプロンOD錠などが存在します。タケプロンOD錠は代表的なPPI製剤で胃酸を抑えて逆流性食道炎や胃潰瘍などに適応がある薬剤です。タケプロンには他にもカプセルが存在していますが、服用のしやすさからOD錠の方が処方されていることが多いです。
D(Disintegrating)崩壊
D錠で代表的な薬剤ではガスターD錠があります。ガスターD錠はH2ブロッカー製剤で胃酸を抑える効果があります。逆流性食道炎や胃潰瘍の治療に用いられることが多い薬剤になります。D錠もOD錠と同様に口の中で溶ける剤形になります。

ガスターD錠はジェネリックだとファモチジンOD錠となりますのでD錠とOD錠に大きな違いはないと言えます。

RPD(Rapid Disintegrating)速崩壊
RPDの代表的な薬剤ではマクサルトRPD錠があります。マクサルトRPDは片頭痛に適応がある薬剤になります。片頭痛は痛みだけでなく発作時には悪心、嘔吐を伴うこともあり、日常生活に支障をきたします。片頭痛が起きる予兆はあるにしても突然始まることが多いです。そのため水なしで飲むことができる剤形は有用と言えるでしょう。

痛みが始まる前に服用しても効果はないので、痛みが起きてから飲みます。

RM (Rapid Melt)速溶
RM錠はゾーミックRM錠が代表的です。マクサルトRPD錠と同様に片頭痛発作治療薬であり、RPDと同様に水なしで服用できるので急な発作に対応ができるのが特徴です。手指の水分で溶けたりしないように工夫もされています。その他にも、市販薬の下痢止めであるストッパSP錠のSPは、Speedyの略でこちらも口腔内崩壊錠の一種になります。

これらの口腔内崩壊錠は少量の水、唾液だけで服用できるメリットがありますが、寝ている状態で服用すると誤嚥する可能性もあります。在宅医療において寝たきりの患者も多いので服用には注意が必要です。

在宅薬剤師がOD錠とかかわる上での役割


在宅医療における薬剤師の役割は医薬品管理をしたり、お薬を渡すだけに限りません。患者の状態や生活などを観察して患者の最適な治療法を薬剤師の視点で医師、看護師、介護士、ケアマネジャーなど様々な人たちに提案、報告することも重要な役割になります。患者の状態、介護者の有無によっては選択できる薬剤も変わってきます。

年齢を重ねるに伴って、受診する病院も増えて服用する薬剤が増えきますので一包化を医師に提案したり、飲み忘れが多い場合はお薬カレンダーを導入したり、服用回数の少ない薬剤に変更を医師に提案することもできます。嚥下能力が低下した高齢者には薬剤を粉砕して粉状にすることで対応することができます。

しかし、粉砕にも手間がかかるのでOD錠にすると時間を短縮することもできますが、OD錠なら胃ろうなど経管栄養チューブで服用する患者に対しても水に溶かして使用することができるのでメリットも大きいです。このようにOD錠に変更することで解決する問題も存在します。在宅薬剤師は患者にあった薬剤選択をサポートするのも大きな役割と言えます。

在宅薬剤師がOD錠とかかわる上での注意点


OD錠にもデメリットが存在します。吸湿性が高いものもあり一包化に向いていないものもあります。服用する薬剤が多くなる傾向がある高齢者では一包化できない薬剤があると管理が難しくなることもあります。また、タケプロンOD錠のように腸用性細粒を含む薬剤だと粉砕すると腸用性が失われるので粉砕することができません。全ての薬剤にOD錠があるわけではないので、一つの用法に粉砕してまとめて一包化することができない事態になる可能性もあります。薬剤ごとに性質を確認することが重要です。

まとめ


在宅医療においてOD錠はとても有用な剤形となっています。患者にあった剤形を選ぶことで患者自身だけでなく、介護者の負担軽減にも繋がります。しかし、OD錠にはメリットも多いのですが、デメリットもあるのでこれらのことを踏まえて適切な剤形選択ができることが在宅薬剤師の重要なスキルになるでしょう。

この記事の監修
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西 智行
株式会社スマイリンク

薬科大学卒業後、大手製薬会社の医薬情報担当者(MR)として入社。3年間福島県の郡山を中心に営業活動を行い、薬局経営事業に着手。関東中心に4店舗のM&Aを経て、薬局経営コンサルや転職コンサルに従事している。

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